なにかオイシイくださーい!

糖尿のオオタニが精魂込めて育てあげた我が家の末っ子ハマグリ(イヌ)(女子)の食い意地たるや、ご主人に似ちゃってと言われてもそれはそれは仕方のないものであり、ちょっとコンビニの袋をガサゴソしようもんなら、寝ているはずのハマグリはふらふらーりと起き出して、白目むきながらこちらを眺めているのだった。ちょっと灰になった明日のジョーみたい。蝶よ花よと育てたのに。ノー。
それから、月並みに「ワン」とは鳴けず、「ヨン」とか「キュウ」とか鳴くのだった。散歩中に売られたケンカは間違いなく買うし、そんなときの鳴き声は「ワシ!ワシ!」なのであった。「ちょっとおきゃんな子なものでごめんなさいねオホホ」とその場を立ち去るしかない飼い主なのだった。
青山や代官山のカフェでは、おイヌ様たちがあんなにも落ち着いてティーなぞたしなんでおる。ハマグリにもあれ…あれをさせたい…。

何年か前にハマグリが家から脱走し(常習)、いつもの時間になっても帰ってこないので、ハマグリを探しに父親が出かけた。実家の家の前は小学校であり、よく散歩の行き帰りに寄っているので、父親はそのときも学校に寄ってみたのだった。ハマグリはいないものかと校庭を見渡してみると、真っ白いイヌがつながれていたらしい。ハマグリの毛の色は白+黒+茶色なので、違うイヌかと思い歩き出した父の背中に「ヨン!」と。
ハマグリの鳴き声だと察した父が近づいてみると、ラインを引くときに使用される石灰が塗りたくられた小汚いイヌがロープでぐるんぐるんに縛られている。校庭にいるのはそのイヌのみ。つかハマグリのみ。オオタニ家の飼いイヌ。しかも「やっと来てくれたじゃーん」みたいな顔つきでヘラヘラ笑っていたらしい。たぶん小学生にさんざん遊び回され、飽きた小学生に見捨てられたまま放置されていたのだと思うけども、泣きながら帰ってくるような子じゃなくてよかった。したたか。ノー。