放送後記

ようやく起きだした昼過ぎには雨が降っていた。カシワさんは一足先に起きていて、一服しながら更新をしていた。自分はといえば、前日の惨憺たる結果により最悪な目覚めだった。
カシワさんが爽健美茶をいれてくれて、ぽつりぽつりと話し始めるとすぐに笑いに変わったが、ラジオの話になると互いに無言になった。ふとテーブルを見ると、カシワさんの飲んだ缶コーヒーが美味しそうで、自分は120円だけ持って外に出た。押したはずの自販機のミルクティー爽健美茶となって出てきた。そんな…誰が好き好んで…とひとしきり自販機に悪態ついていると、近所の主婦にチラ見されたのでニッコリ微笑んでその場をあとにした。
部屋に戻りカシワさんに報告すると、カシワさんはキャハハと笑い、自分はカシワさんのいれてくれたお茶と両方飲んだ。ケータイを確認すると「朝早くにごめんね」という件名で、結婚式の二次会に参加して欲しいという旨のメールが届いていた。そうですかそうですか、頷きながら色んな言葉を飲み込んで消化するとラーメンが食べたくなった。カシワさんに『ラーメンが食べたいのです』と言うと賛同してもらえたので、そうですかそれはいい返事が聞けました、とカシワさんと外に出た。
餃子も食べたいことを申告するとまた賛同してもらえたので、利害関係は一致しました、と二皿頼んだ。店のマスター(カシワさんはそう呼んでいた)は、細腕なのにぶっ倒れそうになるほど中華鍋を揺り動かしているので、心配に思っていたのだが餃子はそうとう油っこかった。そして、自分の頼んだタンメンよりもカシワさんのもやしそばのほうが心底美味しそうだった。そうですかそうですか君らもですか、とスープを流し込んだ。
駅の本屋に立ち寄って新刊を買い、電車に飛び乗り、自分の住む街で降りると雨はまだやんでいなかった。
コンビにに寄って住宅街に入ると、そこには使用済みのタン○ンが落ちていて、危うく踏むところであった。水分を十二分に吸ったそれは若葉マークの形のようになっており、血液はジワジワと雨に溶け込んでいた。あまり見てはいけないような気がして、なんなんですかなんなんですか、と足早に通り過ぎた。
その日初めて煙草を吸った。